ICUでのリハビリ・・・主任の後ろ姿をずっと見続けていたからか、それは随分と特別な気がすると山吹薫はそう思う。
しかしこうやってリハビリ前にいろいろ教えて頂いてすごく助かりますよ。
なんだ珍しく殊勝じゃないか?なんか面白いな。
ふふーん。ようやく新人ちゃんも大人になって来たよねー。そして目標は入室前ADLとは言ったけど、どんどんADLUP!と考える前に念頭に置くことがあるんだよー
珍しいものを見るように目を丸める進藤守を横目に、奇妙に体を捻りながら笑みを浮かべる内海青葉を山吹はまっすぐと見つめる。
特にまずは合併症予防を念頭におくね。それは大体のICU入室患者に通じるものだから覚えておくほうが良いよー。まずはストレス潰瘍予防だけどこれは主に医師によってなされるね。そして長期臥床の必要性から抗凝固療法と併用してフットポンプの使用とリハビリによる深部静脈血栓症予防、そして多くの患者様が人工呼吸器を使用しているから人工呼吸器関連肺炎、いわゆるVAP予防のための呼吸リハビリが必要だね。
確かにICUへ入室する起因となった原疾患や外傷の治療中になんらかの合併症を起こしてしまったら治療も遅れてしまいますからね。深部静脈血栓症予防なら早期離床や積極的な関節可動域練習もまた効果が有るでしょうし、VAP予防のための積極的な体位ドレナージは絶対に必要でしょうね。
ふむふむなるほどなぁ。それにICUに入室すると言うことはそれだけ体に強い侵襲も加わるってことだろ?栄養状態もまた高度に低下するし低下している人も多いはずだから廃用症候群予防の観点もまた必要だなー。
山吹薫は頭の中のメモにしっかりと書き込んだ。ルーチンとして必要ということはそれだけそれが生じやすいと言うことだ。気を付けないと・・・
そして元疾患の治療に合わせて人工呼吸器からの早期離脱も常に念頭もおくね。それは医師によって指示はされSBTというプロトコルに従って行われることが多いと思うねー。これはまた教えるからその時に必要なのが呼吸機能の評価だよー。十分に指示が通るか、咳嗽・・・バッキングだね。これが確認されるか、横隔膜呼吸が十分に出来るのかそういった呼吸機能の評価結果の共有は抜管後に十分に呼吸が出来ずに再挿管されてしまうリスクは減るね。そして早期離床ももちろん考える。呼吸器を使っていても立ったり、足踏みをしたり、時には歩いたりだって出来る。後は状態によって早期の栄養開始もまた念頭に置く。これは24ー48時間以内が推奨されるけど状態に応じてって感じかな。
ふむふむ。つまりは長期臥床に伴う合併症を予防しつつ早期離床と人工呼吸器からの離脱、そして早期から腸管をしっかり動かし栄養状態の維持や改善に務める訳ですね。
疾患にもよるがすぐに経口摂取は難しいし、もしそれが可能でもなかなか食思が湧かないだろうけど、腸管を動かすメリットを考えると経腸栄養はしっかりと行いたいねぇ。でもこうやってルーチンとして頭に置いておくと分かりやすいですね!
思考過程の整理は必要だよー。と内海蒼葉は笑みを浮かべる。しかしまだまだいろいろ学ぶことは多いと山吹薫は腕を組んだ。
山吹薫の覚書86
・元疾患の治療に合わせて二次的合併症予防が絶対に必要。
・多くの患者様が入室するからこそ、共通する部分には思考過程を整理して対応し、抜けてしまうことを予防する。
・果たして本当に僕はICUでリハビリが行えるのだろうか?
【〜目次〜】
『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。
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